模型写真を手前から奥までピントを合わせる方法(Photoshop CC編)

鉄道模型をカメラで撮影したことがあるなら経験があるかもしれませんが、長い編成を撮る場合に手前の車両から奥の車両までピントを合わせるのはなかなか難しいものです。特に実際の鉄道写真と同じような構図で撮影するには接写が必要で、先頭車両にピントを合わせれば後ろの車両はピントがボケてしまいます。このピントの合う範囲のことを写真用語で「被写界深度」と呼びます。

被写界深度はカメラから被写体までの距離に比例しますので、充分な距離を置いて撮影すれば「ピンぼけ」は起こりにくくなります。ところが、一般的に模型自体は小さいためにピンぼけしない距離では模型は小さく写ってしまい、結果として写真としての臨場感は失われてしまいます。

この被写界深度を得るためには①カメラのレンズの絞り(F値)を極力絞る、②複数のピントを合成する特殊なマクロ撮影機能を持ったコンパクトデジタルカメラを利用する、③ピントの位置をずらした写真を複数枚撮影し、Photoshopなどの画像編集ソフトで合成する、などの方法があります。ここでは最後の画像合成で被写界深度を得る方法について解説します。

解説に利用するソフトは「Adobe Photoshop CC 2015」のMac版です。以前は高価なソフトというイメージがありましたが、現在はデジタル写真管理ソフトのLightroomとセットになった「フォトグラフィプラン」が月額980円程度で利用できます。

鉄道模型の編成写真を撮影する際に、先頭車両にピントを合わせると後ろのほうのピントがボケてしまうことがあります。

鉄道模型の編成写真を撮影する際に、先頭車両にピントを合わせると後ろのほうのピントがボケてしまうことがあります。

では早速ソフトの使い方をといいたいところですが、この写真合成をするには撮影の段階で一工夫必要です。まず、ピントの位置や露出、絞りなどをマニュアルで操作できるデジタルカメラが必要です。できればレンズ交換式のデジタル一眼がおすすめです。レンズは接写にも強い「マクロレンズ」が理想的ですが、90mm前後の焦点距離で撮影できるズームレンズを利用しても構いません。また、同じ構図で複数枚の写真を撮影するためにカメラを固定するしっかりとした三脚が必要です。

まずは先頭車両の正面にピントが合うようにレンズのピントリングを回します。ピントはビューファインダを覗いて確認してもよいですが、背面の液晶でピントが合っているかを拡大して確認できる機能があるとさらに便利です(ちなみに老眼が進むとこの機能は重宝します・笑)。テスト撮影してプレビュー機能で確認し、写真の露出や構図に問題がなければ、同じアングルで2両目の車両にピントが合うようにピントを送って2枚目の写真を撮影します。そして、3両目、4両目…のように撮影して最後尾の車両までを続けて撮影します。失敗したかな?と思ったら慌てずにまた1両目から撮り直しましょう。

撮影が終了したら写真をカメラからMacの写真管理ソフトに読み込みます(Windowsでも基本操作は同じです)。そして、連続撮影した写真は書き出し機能でデスクトップのフォルダにまとめましょう。これでようやく準備ができましたので、Photoshop CCを起動します。以下の手順を参考に写真の合成作業にチャレンジしてみてください。

Photoshop CC 2015の場合は、[ファイル]メニューの[スクリプト]から[ファイルをレイヤーとして読み込み]を選びます。

Photoshop CC 2015の場合は、[ファイル]メニューの[スクリプト]から[ファイルをレイヤーとして読み込み]を選びます。

「レイヤーを読み込む」が表示されますので、[使用]のメニューを[フォルダー]を選択して、その右にある[参照]ボタンをクリックします。

「レイヤーを読み込む」が表示されますので、[使用]のメニューを[フォルダー]を選択して、その右にある[参照]ボタンをクリックします。

ファイル選択のダイアログが表示されるので、先ほどデスクトップに書きだしておいたフォルダを開き、[開く]ボタンをクリックします。

ファイル選択のダイアログが表示されるので、先ほどデスクトップに書きだしておいたフォルダを開き、[開く]ボタンをクリックします。

読み込む写真のリストが表示されたら右上の[OK]ボタンをクリックします。このときに[ソース画像を自動的に配置する]のチェックボックスをオンにしておくと、次のステップの作業が省略できますが、ここでは説明のために向こうのまま解説します。

読み込む写真のリストが表示されたら右上の[OK]ボタンをクリックします。このときに[ソース画像を自動的に配置する]のチェックボックスをオンにしておくと、次のステップの作業が省略できますが、ここでは説明のために無効のまま続行します。

すると複数枚の写真がレイヤーとして重ねられ、1つのウインドウとして開きます。レイヤーのパネルは画面の右側に表示されていることが多いですが、見当たらない場合は[ウインドウ]メニューから[レイヤー]を選択します。

すると複数枚の写真がレイヤーとして重ねられ、1つのウインドウとして開きます。レイヤーのパネルは画面の右側に表示されていることが多いですが、見当たらない場合は[ウインドウ]メニューから[レイヤー]を選択します。

レイヤーパネルを単独で表示するとこのような画面になります。ここで[シフト]キーを押しながらすべてのレイヤーを選択した状態にします。

レイヤーパネルを単独で表示するとこのような画面になります。ここで[シフト]キーを押しながらすべてのレイヤーを選択した状態にします。

[編集]メニューから[レイヤーを自動整列]を選びます。すると写真の解析が始まり、レイヤーの順番が整列されます。

[編集]メニューから[レイヤーを自動整列]を選びます。

「レイヤーを自動整列」の設定画面になります。ここでは[自動設定]のままでも構いませんので[OK]ボタンをクリックします。もし、レイヤーの整列がうまくいかない場合には[コラージュ]も試してみましょう。

「レイヤーを自動整列」の設定画面になります。ここでは[自動設定]のままでも構いませんので[OK]ボタンをクリックします。もし、レイヤーの整列がうまくいかない場合には[コラージュ]も試してみましょう。

レイヤーの整列が済んだら、続けて[編集]メニューから[レイヤーを自動合成]を選択します。

レイヤーの整列が済んだら、続けて[編集]メニューから[レイヤーを自動合成]を選択します。

「レイヤーを自動合成」の設定画面になります。通常は[画像をスタック]で問題ありません。[シームレスなトーンとカラー]のチェックもオンのままでよいでしょう。[OK]ボタンをクリックします。

「レイヤーを自動合成」の設定画面になります。通常は[画像をスタック]で問題ありません。[シームレスなトーンとカラー]のチェックもオンのままでよいでしょう。[OK]ボタンをクリックします。

画像の合成が完了しました。[ファイル]メニューの[書き出し]からJPEG形式などファイル形式を選択して合成した写真を書き出します。

画像の合成が完了しました。[ファイル]メニューの[書き出し]からJPEG形式などファイル形式を選択して合成した写真を書き出します。

すると、ピントの位置が異なる複数の写真が合成されて手前から奥までピントが合った被写界深度の広い写真が完成します。

すると、ピントの位置が異なる複数の写真が合成されて手前から奥までピントが合った被写界深度の広い写真が完成します。

 

手順は複雑なように感じられるかもしれませんが、写真素材が揃っていれば数分の操作で完了します。それでは最初の被写界深度の浅い写真と比べてみましょう。分割された写真の上が通常の撮影、下が合成した写真です。その違いがお分かりいただけるでしょうか。

合成前_Fotor_Collage

ここでは複数枚の写真を手前から奥までピントの合った写真に合成する方法をご紹介しました。鉄道模型ライフのお役に立ちましたら幸いです。それでは、また。


カテゴリ:[特集 ]
著者:鉄道模型部 編集部
  

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